特例の1つ納棺〜出棺 施主と葬儀屋さんの思い
このお話はあるご遺体を病院から自宅へ搬送し、お施主さんの強い思いから
通常とは違う特例の、納棺〜出棺までのお話です。
当番の夜会社からの電話・・・仕事だ・・・
お迎えに行く病院の名前、亡くなられた方の名前、住所、電話番号を聞いて
指定された時間に病院へとお迎えに上がる。
亡くなられた方は101歳のおばあさん もぅ大往生です
お施主さんは74歳の長男
目次
安置場所
住所を聞いたらすぐ場所が分かった。
それは私の中で、3本の指に入る搬送するのにちょっと厄介で大変な団地だから・・・
エレベーターの無い団地だ。問題は何階かだ?
出来れば、斎場でお預かりさせてくれないかなぁと思いながら病院へ向かう・・・
病院に着いて、安置場所の確認をする。
「ご遺体は、どちらにご安置なさいますか?」・・・
「出来れば、自宅に戻してやりたい・・・」
「かしこまりました」・・・今、自宅って言いましたよね・・・言っちゃいましたよね・・・
問題の団地に到着
病院から自宅まで向かう車の中で大まかな葬儀の内容を聞く。
葬儀の内容は、お寺が県外にある為、先にお骨にし、後にその県外にある
お寺で葬儀をしたい。親戚もほとんどその近くに居る為との事。
荼毘にふす時は、お施主さん1人だけ。
葬儀のご意向は分かった。気になるのは何階が自宅なのかだ。
何気に聞いてみた。お施主さんの口から「3階です」と・・・ちょっと散らかってますけど・・・
同時に運転してる私の左足がストレッチを始める・・・
団地に着き3階にある部屋にご安置する場所の確認をしに行く。
玄関に入った瞬間・・・
私の目に飛び込んで来たゴミ屋敷の光景と、あの鼻をつく何とも言えない異臭・・・
よくあるパターンだけど、とてもご安置出来る状態では無い。
葬儀屋さんは時に掃除屋さんにも変身する。
ベットの上には味噌汁を飲んだであろうお椀が・・・
何で、ベッドにお鍋の蓋が? 部屋中、中身が不明な袋の山。
と、ご安置する前の大仕事から始まった。同僚も苦笑い・・・
何とかご安置する場所だけスペースを作り、何とか3階まで運び
無事ご安置も出来ました。足はプルプル、滝の様な汗です・・・
打ち合わせ
ゴミの山に囲まれての打ち合わせ。
以前、座る所も無く立って打ち合わせをした家もある私には
こんなのはまだ序の口で、細かい話に入る。
このお施主さん割りとお話好きで、身の上話の方が多い。
普段あまり話し相手が居ないせいかな?話の中で、30年前に
今回の亡くなった連れ合いも、私の働いてる会社で葬儀をして頂いたみたいで
お施主さん、しみじみと
「ちょうど、あんたの座って居る所で倒れてたよ・・・」と
「あぁそう・・・だったんですか・・・ここでね・・・」マジかぁ・・・今日はなんて日なんだ!
そんな事言われても、顔色なんて変えられませんからね。10年近く働いてて初めてこんな事言われたよ!
話を戻して終わらせないと・・・
どうしても故人が住み慣れた自宅から出棺したいと言うお施主さん。
気持ちは分かるが、どうしてもあの狭い部屋にお棺は入らない。
なるべくお客さんのご意向に沿うのは大前提。
棺が入らない部屋から、どうやってご意向に沿うか?
ご意向に沿う為には1つしか方法は無い。
でもそれは、お施主さんのモラルの問題になってしまう。
それは、外の1階の踊り場で納棺してからの出棺となる。
でもこれは葬儀屋さんとして、人目に付く所での納棺は、その場面を見て中には
「こんな所で納棺しなくても」とか「何を考えてるんだっ」とか思う人もいるかも知れない事
なので、そう言う事も踏まえて斎場での納棺を提案。
結果
やっぱり家から出棺させたいお施主さん。
出来る範囲でお施主さんの思いを優先に考えると、
団地の1階の集合ポストの所に
棺を置いて、納棺をし出棺する事に納得してもらいました。
特例ですよ!外で納棺なんて!
これからのお施主さんの事も考え話をしました。
私達は、2、3日のお付き合いですけど、お施主さんはまだそこに住み続ける。
普通にお見送りして頂ける方もいらっしゃるかも知れないが、
中にはこの事で今まで普通にご近所付き合いしてたのが、
お施主さんの気持ちを知らないで、ただ「外で納棺なんてしてたわよ!」なんて
変な噂を立てられて、ギクシャクする場合もあるかも知れないと。モラルの問題もありますよ。と
それでも良いと・・・
でもやはりお施主さんのご意向は変わらずでした。
まとめ
大切な人の事思うお施主さん気持ちと、そのお施主さんのモラルを目の当たりにした
葬儀屋さんの思い・・・
とてつもない、あの部屋になぜお施主さんは故人をご安置させたのか・・・
葬儀は十人十色ですけど、人の思い方、今回はちょっと複雑でした。